−“どんぐり”には様々な研修制度がありますが、代表的なものとして東京研修があります。どういったことをするものなのか教えてください。
坂田:東京研修はいくつかのグループに分かれて、1泊2日で首都圏の話題になっているお店や、スタッフが個人的に気になっているのパン屋さんを巡るものです。研修後に2日間で得たものをヒントに商品開発をして販売まで行っています。今は新型コロナ禍の影響もあって勤続4年目の社員が行くことになっているんですが、僕は2年目の時でした。
当時、やっと仕事に慣れてきたくらいで、メンバーも一応同期なんですが、会ったことのない人もいて正直、不安でしたね。その気持ちのまま東京に着いてみると、まさかの台風。雨が酷かったんですが、それでも最初に行ったパン屋さんが行列していたんですよ。雨のなか待っていると、傘を持ってない人にお店が傘を貸し出してくれたんです。その時にこういう小さな心遣いが大事なんだなって気付かされましたね。そこから色々と見て回りましたけど、パンの種類もそうですし、見せ方なんかも含めて東京は違うなと思いました。食材の良さを引き出しながら、さらにひと工夫、ふた工夫している。東京研修で確実に自分の世界が広がりました。
研修が終わってから初めて商品開発から販売するところまで経験して、この仕事の楽しさを改めて実感できました。でも、その時に感じたのが、もう少しサポートが欲しかったなということ。だから、TOPPI(※1)に参加して東京研修の引率やサポートを始めました。東京へ行って、どんなところを見たらいいのか、どうやって商品を作ればいいのか、当時の自分だったらどうして欲しかったのかを思い返しながら若いスタッフの手助けをしています。
※1:新商品開発のサポートや新たな社内制度などを考える有志によるチーム
鈴木:私も2年目の時に東京研修に行きました。当時、同期4人で東京に行ったんですが、そのうち2人は全然話したことのないスタッフ。でも、同期だから色んな苦しさや悩みなんかを研修中に話して、交流を深められたのはよかったです。あと、坂田さんが言った通り、私の時も引率の方がいなかったので、自分たちで行くお店を決めて、行き方を調べて、大変でしたね。実際に行ってからもグダグダになっちゃうことが多かったので引率の人が着いてきてくれるのは羨ましいです。本澤さんの時は、引率の人はいたんですか?
本澤:そうですね。去年行かせてもらったんですが、引率の方はいました。おかげで色んな面で助けてもらえましたね。私は東京研修に行くまで、人気店であってもパンのためにどうしてそんなに並ぶの?って思っていました。でも、実際に行って並んでみたらそんなに時間を感じなかったんですよ。もちろん一緒に行っている人と会話しているのはもちろんなんですけど、作っているところを見せるお店が多くて、その製造風景を眺めていたら時が経つのを忘れていました。実際には1時間以上も並んでいるのに、あっという間に感じましたね。
鈴木:村田くんは今年でしたよね?
村田:僕は、2ヶ月前に行ってきたばかりです。ひたすらパン屋を見てきましたが、やっぱり東京ならではの売り方があって、すごい勉強になりましたね。たとえば、東京は外国人のお客さんが結構多いんでパンの名前を英語にしたり、値段表記を英語にしたり…どの客層に向けて売っているのか意識することが重要なんだなって。あと東京ってお店が狭かったりするので、狭い中での売り方の工夫もあって感心しました。
坂田:なるほど。ちなみに、みなさんは東京に行く前と、行った後で変わったことってありますか?僕は行く前、東京のパン屋は「ちょっと高くて、ちょっと美味しい」ぐらいにしか思ってなかったんですけど、実際に自分の目で見ると値段が高いには高いなりの理由があるんだなって感じました。あと、こんな食材の組み合わせがあるんだとか、こんな売り方があるんだとか、色んな発見があって研修後はハイになっちゃって何かすごいものを作ってやろう!って気持ちになっていましたね。販売目線ではどうでした?
鈴木:東京のおしゃれなお店ってちょっとずつきれいに並べているから美味しそうに見えるんだなって感じました。それから並べ方はすごく大事だと思って、“どんぐり”のディスプレイって結構モリモリに盛っていたりするんですけど、できるだけ綺麗に並べるように意識しています。
本澤:私は、もっと楽しく接客しなきゃいけないなって感じて、研修後から笑顔で目を合わせて話すことを意識しました。そうしたら本部の方が褒めてくださって、研修に行ったことが活きているなって思っています。
坂田:先輩たちの話を聞いて、これから東京研修を迎える川合君はどんな研修にしたいですか?
川合:そうですね。インスタなんかを見ていて行きたいお店が既に結構あるんですよ。実はプライベートで東京に行って1〜2店舗だけなんですけど見にいったりもしていて、お店では接客の仕方、店内のBGM、お客さまの動きなど、色んなものが重なり合っているので実際に行ってみないと分からないことがたくさんあるんだなって感じています。だから普段は行くことのできない色々なパン屋を1泊2日で見て回れるっていうのは、すごい楽しみです。
皆さんが東京で行ったお店で一番印象に残っているのは、どんなお店ですか?
鈴木:東京駅の改札内にあるカレーパン専門店は、揚げたてで美味しかったと一番記憶に残っています。
本澤:今とても人気のある福岡に本店がある表参道のお店です。私は値段を見ずに気になった商品は値段を見ずに全部買っちゃいました。迷っている暇はない!と思って。とにかく見た目も味も印象的でしたね。
村田:そのお店は僕もオープン1時間前に行ったんですけど、すごく並んでいて女性のお客さまが多かったと覚えています。やっぱり店内の雰囲気も良くって、そこでお客さまが写真を撮って、SNSでまた広まって、別のお客さまが集まってくるんでしょうね。
坂田:僕は“どんぐり”が最初に目指したといわれている千葉県のお店。空港から結構遠いんですけど、明るい雰囲気でお客さまのために色々なことにトライしていることが伝わってくるお店でした。
川合:そうなんですね。お話を聞いているだけで今からワクワクしてきますね!
−東京研修のほかに、最近では札幌市内のパン屋巡りをしていると聞きました。
坂田:僕がTOPPIで立ち上げたんですが、2年目の社員が対象です。東京研修と同じように札幌市内のパン屋さんを丸1日巡って、研修後に商品開発をしてもらいます。川合君は最近参加したんですよね。
川合:そうですね。僕は、1年目にも参加していて2回参加させてもらっています。2年目の今回は1年間働いて、より深く商品の並べ方や装飾など、パン以外の部分にも目を向けられるようになりました。
本澤:研修後にどんなパンを作ったんですか?
川合:クロワッサンドーナツを作りました。とにかくハイブリッドなものが作りたくて。
坂田:札幌パン屋巡り後も、東京研修後も商品開発をしているけど、みなさんはどんなものを作ったんですか?
本澤:私はシリアル生地を使って野菜がたくさん入ったバーガーを作りました。販売スタッフは、アイデアを出して製造の方にレシピを作ってもらうって流れを知らなくて、全部自分でレシピまで考えて提出したら本部からのフィードバックが大変なことになっちゃいました(笑)。
スマホの画面にバーッて指摘が送られてきて、製造スタッフって普段から大変な思いをして商品開発をしているんだなって、そこで分かりましたね。
村田:僕は、ふわふわメロンパンをベースに考えました。7月頭ぐらいに売るって決まっていたんで夏に向けた商品ということでメロンを使いたいなと。メロンジャムを混ぜたホイップクリームと、メロンピューレを混ぜたカスタードをパンパンにまで詰めた、めちゃめちゃメロン味のメロンパンに仕上がったと思います。
−“どんぐり”は札幌、東京といった国内だけでなく海外にまで足を伸ばして研修をすることがあります。どういったところへ行くんですか?
鈴木:私は、フランスとイタリアに行きました。本部の方に接客の仕方が日本と違うから体験してきてっていわれていたんですが、実際に行ってみると日本と違ってアッサリしているんですよ。元気いっぱいに「ありがとう!」じゃなくて、落ち着いた感じで「ありがとうございました」という感じで、確かにその方が楽だなとは思います。でも、私は日本的な接客の方が好きだなと改めて感じましたね。
いらっしゃったお客さまに「ありがとうございました」と心を込めて伝えるのは大事なことなんだなということを認識できたのは良かったです。坂田さんはどこに行ったんですか?
坂田: 5年くらい前に台湾、去年はタイに行かせてもらいました。会社として注目している「熱くて元気がある国」ということで、視察に随行させてもらったんです。この2カ国はどちらも本当に活力に溢れていて迫力がありましたね。
食べ物が合わなかったらどうしようとか不安もありましたけど、実際に現地で食べたら美味しいんですよ。目で見る世界観も広がりますけど、味覚も広がりますね。そして、海外を知るからこそ日本の良さも改めて感じることができるんで、若い人もどんどん行った方がいいと思います。
本澤:私も今年フランスに行くんですよ。そういう話を聞いていると、本当に楽しみですね。
−それでは次に入社後のフォローアップ研修について教えてください。
坂田:僕や鈴木さんの世代の時はなかったんですが、今は入社1年目と2年目の人を対象にフォローアップ研修をやっているんですよね。
川合:はい。僕はまず入社半年の時に自分自身の振り返りを行いました。そこで客観的に先輩と自分を比較した時に、自分はまだ何もわかっていないし、何もできていないってことに気付いたんです。作業のスピード感、スタッフの回し方…自分もこれくらいできなきゃいけないんだなって感じましたね。そして、翌年にはまた新入社員が入ってくるので、どんな先輩になりたいかということを考えて目標設定をしました。
その後の2年目研修は、僕のなかでは大きな転機になったと思っています。当時、現場全体の動きなんかを見ていかなきゃいけないなって考え始めた時期で、先輩たちの動きをよく見るようになっていたんです。
この研修を機に整理してみると自分の見ている世界がだいぶ狭かったということが分かりました。店舗の売上のことなど、見ている幅が全然違う。僕はまだ商品を考えて、スピードを上げて、成形を上手くやってということしか頭になくて。それから少しずつでもできることを増やしていこうと思いました。その頃から積極的に先輩に質問するようになったんです。後輩から何を聞かれても困らないように分からないことをなくすように心掛けています。
鈴木:本澤さんは研修で何かを変えようと思ったことはありますか?
本澤:私の時は製造も販売もやったことがあるベテラン社員が、若手社員の話を聞いてくれるという機会がありました。当時の私は同期が何をしているかが気になるタイプで、遅れをとっていないかって不安を抱いていることを相談させてもらったんです。そうしたら「人数が少ない店舗は1人ずつゆっくり教えているんだよ」「遅いとか早いとか関係ないよ」って言ってもらえてホッとしたのを覚えていますね。
村田:僕も同期とお互いに現況を報告しあっていると「面台の仕込みをやってる」とか「窯のつけ(※2)をやってるよ」とか聞いて、ヤバい!先越される!と焦ってガムシャラに仕事した覚えがあります。同期の存在が向上心に繋がっているのかもしれないですね。
※2:店の状況を見て「どのパン」を「どのタイミング」で「どのくらいの数」焼くのか判断する司令塔役
坂田:それはいい関係性ですよね。最近では、フォローアップ研修以外にもチームビルディングを目的にしたキャンプ研修を行いました。先輩社員と若手社員がチームを組んでミッションをクリアしていくもので、楽しみながらリーダーとメンバーそれぞれの役割を学んだそうです。
鈴木:そのキャンプ研修の代わりに今年からキッチンカーの研修も始まるみたいですね。チームのなかでの役割を決めて、それぞれの動きを自分たちで考えていくっていうのは、最終的に店舗運営の考え方にも通じるので、とても実践的ですよね。
坂田:もちろん本業であるパンづくりの研修も製粉会社さんの協力を得て、食パンやフランスパン、デニッシュなどの基本を学ぶ勉強会も開かれています。粉の違いや温度の違いで作り方がどう変わるのかなど、店舗ではなかなか学べないことが多いんですよ。
−今後、どんな研修があったらいいなと思いますか?
坂田:僕は東京じゃないところに行ってみたいなと思うんですよ。それこそ福岡とか。
村田:ちょうど今度3日間、福岡に研修に行かせてもらう予定です。東京研修はお客さんとして色んなパン屋さんを見て回るんですけど、今回は福岡にあるパン屋さんに「作る側」として入らせてもらいます。違うお店の現場に入らせてもらうっていうのは、本当に勉強になると思うんで今後も増やしてほしいなって思いますね。
坂田:それは羨ましい!次は僕も参加したいですね。
川合:僕もめちゃくちゃやりたいです!
鈴木:人材交流というものですね。参加したスタッフそれぞれ得るものが多いので今年から全国各地のパン屋さんとやってみよう!ということで始まったみたいです。あと、パン屋さんだけでなく別業種の企業との合同研修も盛んですよね。“どんぐり”の良さが再確認できるいい機会になっているって聞きました。
坂田:これからも研修先やプログラムをリクエストしつつ、実りあるものにして会社全体で成長していきたいですね。