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美味しさと笑顔を乗せて、北海道を駆けるオンリーワンのキッチンカー。

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美味しさを手軽にテイクアウトできることから様々なイベントや街角でよく見かけるようになったキッチンカー。実は“どんぐり”にもキッチンカーがあることをご存知でしょうか。どんなイベントで、どんなメニューで、どんな想いを持って運営しているのか…とても気になるところです。そこで今回は主要メンバーである本部の若原さんと西岡店の廣瀬さんにお話を伺いました。

−“どんぐり”としてキッチンカーを始めたきっかけを教えてください。

若原:キッチンカーを始めてみようかという話が出たのは新型コロナ禍の真っ只中、お店にもお客様が全然いらっしゃらない時期でした。当時は屋外なら大丈夫という風潮もあってキッチンカーが流行り始めていたんです。そこで“どんぐり”でキッチンカーをやるとしたらどんなことができるのかと考えていました。そうしたら社内から「若原がやりたいならやってみれば」という後押しをもらって、まずはキッチンカーを借りてやってみようか!と動き始めました。それから社内的な事情があって本格的にスタートしたのは2022年からですね。

どんぐりキッチンカー出店中の様子

廣瀬:私は、キッチンカーをレンタルしたタイミングで声をかけていただきました。ちょうどその頃、私自身もキッチンカーのようにお客様とふれあえる仕事がしたくて転職まで考えていたんです。本当に偶然で驚いたんですけど、すぐに「やらせてください!」と伝えて参加させてもらいました。

若原:本当に廣瀬さんは素晴らしいですよ。お願いしたら、ちゃんと計画を立てて全部やってくれるから本当に信頼しています。

廣瀬:物が足りなかったり、発注漏れなんかがあると店舗であれば他のもので代用したり、他店から分けてもらったりできるんですけど、キッチンカーの場合はものがないとどうにもできない。忘れ物がないように一覧表を作ったり、発注もToDoリストを作って漏れがないようにしたり…責任重大だなとは思いましたけど、私に任せて大丈夫だと思っていただけているので頑張らなきゃと必死になっていましたね。

廣瀬さん

−キッチンカーは当初レンタルでしたが、現在は“どんぐり”として所有していますよね。

若原:社内で手応えを感じてきたタイミングで、“どんぐり”でキッチンカーを作ろうよって話になりました。いま所有しているキッチンカーは、パンを焼くことができないものの色々なことができるようになっています。カレーパンやフライドポテトなどの揚げ物が作れるフライヤー、焼きそばや焼きトウモロコシが作れるグリドルが備え付けられていて、あとはクレープを作る機材も積んでいます。

廣瀬:あとご飯も炊けるので、おむすびなんかも販売できますね。

若原:他にもまだ使ってはいませんが、たい焼きやおやき(今川焼き)が作れる機材も揃っています。“どんぐり”って自家製の粒あんやカボチャあんなどを手作りしているので、たっぷり入れて販売してみたいなと考え中です。

若原さん

− “どんぐり”がキッチンカーを使う意味は、どんなところにあると思いますか?

廣瀬:最初の頃は江別などの札幌近郊に行くことが多かったんですが、ある時、足を伸ばして三笠にある神社のイベントに参加しました。いつもはフライドポテトやハンバーガーなどをメインに販売しているんですが、少し札幌から離れているので店舗で売っているパンを焼いて持っていくことにしたんです。

正直、どれくらい売れるか分からないので気持ち少なめに準備して。当日11時から販売開始だったんですが、準備をしている10時半くらいから「もう買えるの?」「まだ買えないの?」みたいな感じでどんどんお客様が集まってきて、その人だかりを見て他の人も「なんだ?なんだ?」みたいな感じで集まって…販売を始める頃には長蛇の列ができちゃって30分くらいで完売してしまいました。

“どんぐり”を知っている人は「どんぐりがここまで来たんだ!」と言ってくださるし、知らない人も「札幌のパン屋さんなんだ」って好意的に受け止めてくれる。その時に感じたのが、まさにこれこそ私がやりたかったことなんだなって実感できたんです。普段は札幌に来ることができない人へ美味しいパンを届けて、喜んでもらう。だから、もっと遠くの街までパンを届けて、活気づいてくれたらいいなと思っています。それが、キッチンカーをやっている意味なのかなと感じています。

どんぐりキッチンカー営業中の様子

若原:そうですね。一般的な会社だったら「何のためにやるのか」って意味を絶対に聞かれますよね。でも、僕は目的がなくてもいいと思っています。なぜなら“どんぐり”がそこに訪れるだけで、みんなを笑顔にできる力を持っているのかなと考えているので…。

もちろん、その街の笑顔を広げるための工夫もしています。たとえば、その地方の食材を使ったメニューを作ることもそのひとつ。新篠津村を訪れた時には、地元の農家さんとコラボさせてもらって名産品のお米や野菜を使ったカレーを作ったり、メロンを使ったメロンデニッシュを作ったり…実際に農家さんがキッチンカーに来てくれて「これ、うちが作った人参なんだよ」って喜んで買ってくれました。そうやって笑顔がつながっていくのが良いなって感じています。

−そういったお話を聞くと、キッチンカーをやる意味を感じますよね。その他に印象に残っているエピソードはありますか?

若原:キッチンカーでの販売は、店舗と違ってお客様とコミュニケーションが取りやすいんですよ。店舗だと、どうしてもスタッフは忙しく動き回っているし、お客様も目的を持って買いに来られているのでご用件以外のお話ができない。でも、キッチンカーの場合はゆっくりとお話ができるんです。

実際に、色んな店舗を回ってくださるほどのヘビーユーザーさんがキッチンカーにいらっしゃってお話したことがあります。その時に昔売っていたパンが美味しかったからまた食べたいという話になったんですね。実は“どんぐり”って今は販売していないパンでも何日か前に予約していただければ特別に作ってお売りできるんですよ。そのことをご存知なかったのでお伝えしました。よくいらっしゃるお店をお聞きしていたので、そこの店長に連絡をとって「連絡が来ると思うから用意して差し上げてください」ってお願いもしておいたんです。

後日、そのお客様から「店舗で対応してもらいました。美味しかったです。本当にありがとうございました」とご連絡もいただきました。こういったお客様とのコミュニケーションは、キッチンカーだからできるメリットなのかなと感じています。

廣瀬:確かに、そのお客様はとても印象に残っていますね。

若原:そのほかにも円山動物園に出店した時のお客様とのふれあいも印象的でした。円山動物園って意外とカラスが多いんです。キッチンカーで買った食べ物を狙っているんですよ。するとカラスに食べ物を奪われた大学生がいて、走って追いかけても、追いつくはずもなく…すごく悔しそうにしてたんで、ちょっと声を掛けたんです。「うちのザンギでよかったら食べる?」って。そうしたら「ありがとうございます!今度、どんぐりに買いにいきます!」という感じで新しいお客様とのつながりができたこともありました。

−これまでキッチンカーで、どういった場所に出店しましたか? 

若原:廣瀬さんが先ほど少し触れましたが、江別のイベントに出ることが多いですね。“どんぐり”として「えべつ観光協会」に参加しているので、協会から「こういうイベントがあるんですが、参加してもらえますか?」ってお誘いいただいています。参加するとそこでも新しいつながりが生まれるので、最近では色々な方からお誘いいただけるようになりました。

廣瀬:でも、いまはお誘いいただいたイベントの一部にしか参加できないんですよね。

若原:ありがたいことに色々な方からお話をいただくんですが、どうしても店舗での販売が優先になってしまうので頻繁に参加できないんですよ。

−キッチンカーは屋外で調理・販売していますが、天候などで苦労したことはありますか?

廣瀬:やっぱり、めちゃくちゃ暑い日だとお客様は飲み物とか、アイスクリームのお店に行ってしまうので集客が大変ですね。新篠津村に行った時も、とても暑い日だったんです。

若原:その年、北海道で一番暑かった日でしたね。

廣瀬:そんな日に限って私たちは、カレーを販売していたので商品の選択を失敗したと反省しました。

若原:同じカレーでも冬の寒い日だと成功するんですよ。江別の河川敷であった12月のイベントなんですけど、雪が積もっていて気温は-1度。僕らはここでもカレーを60食くらい持っていったんですけど、その日は昼までに全部売り切れちゃいました。廣瀬さんのいう通り、夏は冷たいもの、冬は暖かいものという感じで経験を積みながら最適なメニューが用意できるようになればお客様に喜んでもらえるんですけどね…

廣瀬:私たちがキッチンカーで出店する時って1〜2ヶ月くらい前に持っていくメニューを決めなければならないんで難しさがあるんです。さすがに天気までは読めないので。でも、難しいとは思いながらも毎回、出店のたびに天気や気温、どんなものが売れたのか、自分が感じたことを一言コメントでメモしています。そのメモをどんどん増やしていって経験値として活かせるようになったらいいなと思っています。

キッチンカーで販売したフードメニューの例

−出店するときのメンバーは、どうやって選んでいるんですか?

若原:対象となるのは製造スタッフ、販売スタッフ、パートさんも含めた全員。そのなかで参加したいスタッフを中心に声をかけさせてもらっています。それと店舗で働いていると毎日同じことの繰り返しになりがちで、煮詰まっちゃう若手が時々いるんですよ。そういう子たちも連れていって、いつもと違う環境で楽しみながら仕事がしてもらえたらという気持ちで毎回メンバーを選んでいます。

廣瀬:役職が付くと研修が増えて店外で仕事をする機会が増えていくんですが、入社1〜3年目っていうのは、そういった研修や社外での活動がほとんどなくて毎日同じ店舗で同じルーティンで作業をして…という感じになりがちなんです。だからキッチンカーに参加してもらって普段と全く違う環境で仕事をすることでリフレッシュになれば。それに他の店舗にいるスタッフと話す機会も作れるので、お互いの悩みを話したりコミュニケーションが取れるんですよね。

若原:あと、こんなことを言ったら怒られてしまうかもしれませんけど、僕らはキッチンカーを使って仕事を楽しませてもらっている感覚なんですよ。自分達がリフレッシュしてエネルギーをもらいに出掛けているといいますか…だから、きちんとキッチンカーで働いてもらいながら仕事終わりにみんなで焼肉やジェラートを食べにいったり、スタッフもその一日は最後まで楽しめるように運営しています。 

−これからキッチンカーでの活動をどのように考えていますか?

若原:いま、“どんぐり”には200人以上の正社員がいます。そのなかには地方出身の社員がいっぱいいるんですね。先ほど話した新篠津村でのイベントの時にも社員の親御さんが買いにいらしてくださったんです。「いつも娘がお世話になっています」って言われた時に、どうしてその社員を連れてこなかったんだろうって後悔しました。地方だと自分の子どもが働いている姿を見る機会ってほとんどないじゃないですか。そういう機会って大切だなって思ったんです。そこで、いま考えているのは、たとえば函館出身の人たちを何人か集めて函館にキッチンカーを出店しようかなと。もちろん事前に告知をしておいてご家族やお友達に働いている姿を見ていただく。そして、実家に1泊して帰ってくる。そういった企画を今年中に1回はやりたいなと思っています。

廣瀬:その他にも子ども向けの企画もありますよね。

若原:そうですね。お仕事体験のような形で、私たちと一緒にキッチンカーで簡単なメニューを作って販売するというイベントもやってみたいなと思っています。

−おふたりにとってキッチンカーでのお仕事はどういったものですか? 

廣瀬:私自身、キッチンカーを使った仕事がしたくて辞めようかと考えていたところ、偶然にも“どんぐり”でやりたい仕事を実現することができました。やりたいことを、やらせてもらえているということに感謝をしながら自分ができることを精一杯やっていきたいなと感じています。

若原:僕自身、人を喜ばせるのが好きで、みんなにワクワクしてもらいたいんですよ。今日のお話のなかでも何回か出てきているんですが、お客様も、スタッフも、僕自身も含めて全員を「笑顔」にできるもの、それが“どんぐり”が手掛けるキッチンカーですね。

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Profile
本部
若原和史

新商品の開発や新規事業の立ち上げ、新店舗がオープンする際のオペレーション指導など、“どんぐり発の新しいこと”を主に担当。人を喜ばせることが好きで、みんなにワクワクしてもらいたいという想いから“ワクワク屋さん”を自称。好きなパンは自らが開発したベーコンエッグ。

西岡店
廣瀬瑞穂

現在は仕上げを担当しているものの製造工程の全てを担うことができるスペシャリスト。実は入社するまであまりパンを食べていなかった元ごはん党。好きなパンは、明太フランス。“どんぐり”の中で一番衝撃を受けたパンで、食べ方は焼き立てをそのままかぶり付く派。